AI医学

AI医学

当院では、診療支援にAI医学を取り入れています。
AI(Artificial Intelligence、人工知能)は人間の論理思考をコンピュータ上に再現する技術です。深層学習(ディープラーニング:AIが自動的に特徴を抽出して学習)の発展により、データから自律的に学習することでいろいろな判断ができるようになりました。この仕組みを医療に応用したものが、AI医学です。AI医学においては、発症のリスク因子・疾患群の診断・治療法の適時選択・予後の総合評価など多くの集積された大量の患者データをもとに判断基準をAIが構築し、個人ごとに最適な診断、適切な治療法、達成できる予防法を提示できる日もそう遠くはないのかもしれません。

現時点でのAIは「特定の画像を識別できるもの」の段階で、画像診断に最も適しているとされています。画像認識ではAIが人間の能力を超えてきました。AIは人間の目では識別できない微細な変化までを捉えることができるため、胸部X線画像、胃・大腸内視鏡検査画像の悪性腫瘍診断で有用です。AIが医師の診断を支援(CADe, CADx:Computer Aided Detection / Diagnosis)することができるようになってきました。医学的統計上、AI内視鏡の優位性が示されてきています。さらに診断の精度管理(CAQ: Computer Aided quality assurance)の向上が期待されています。内視鏡検査領域では、国立がんセンター病院、大学附属病院などからの3000症例から10000症例以上の癌画像をAIに深層学習させたAI内視鏡が実用化されてきています。しかし、特異度、感度100%ではないので、検査医との協働作業は不可欠であり、さらにAIプログラムのバージョンアップは断続的、持続的に行われなければなりません。

AI内視鏡を使用したCAD検査では、医師とAI内視鏡の協働によって、診断結果のダブルチェックを行うことができ、日本を代表するハイ・ボリュ-ム・センタ-のスーパ-・エキスパ-ト検査医によるアシストを受けるのと同じ状態となり、より精度の高い、より正確な診断ができるようになります。

大腸カメラ(大腸内視鏡)検査

当院では、NEC社の大腸内視鏡用の「WISE VISION Endoscopy」AI診断支援医療機器を運用しています。NEC社AI内視鏡の開発にあたってはNECのAI技術群「NEC the WISE」(NECの先端AI技術群の名称) 及び米国国立標準技術研究所(NIST)において高い評価を獲得している顔認証技術を応用しています。NECは2016年から国立研究開発法人国立がん研究センターと連携し、1万病変以上の内視鏡画像を専門医の所見と併せてAIに学習させ、病変が疑われる部位を自動検知するAI内視鏡を開発しました。性能検証の結果、動画でも感度83%、特異度89%を有することが明らかとなり、また、医師読影試験の結果から、経験の浅い医師が本AIシステムを使用することにより、病変を発見できる割合が見つけにくいとされる表面型の病変で6%高くなる結果が得られ、経験に影響されることなくAIのサポートにより病変を発見できる可能性があることが明らかになりました。

胸部レントゲン(X線)検査

当院では、LPIXEL社の胸部X線画像から「肺がん」が疑われる肺結節候補域を検出する、医用画像解析ソフトウェア「 EIRL Chest Nodule」を運用しています。胸部X線画像から条件を満たす肺結節の形状に類似した領域(5mm〜30mmまで)を検出し、医師による読影をサポートします。医師単独で読影した場合と比べ、医用画像解析ソフトウェアを用いて読影した場合には、放射線科専門医で9.95%、非専門医で13.1%の感度が上がることが認められました。また、読影試験における診断性能を表すAUC(Area Under the Curve)値は、本品を併用すると6.9792ポイント向上し(p<0.0001)、診断精度の向上が認められました。

※2024年3月6日追記;

アルゴリズムの新たな追加機能により新たな異常陰影検出できるようになりました。

追加アルゴリズムは従来の結節影に加え、浸潤影や間質性陰影、無気肺も検出の対象としています。胸部X線画像から条件を満たす対象領域を検出し、医師による読影をサポートするようになっています。医師単独で読影した場合と比べ、本ソフトウェアを用いて読影した場合には、専門医で11.1%、経験5年未満の非専門医で15.5%の感度が上がることが認められました。また、読影試験における診断性能を表すJAFROC解析によるFOM(Figure of Merit)値は、本品を併用すると専門医で0.059ポイント向上し(p<0.001)、診断精度の向上が認められました。

本アルゴリズムは従来の結節影に加え、浸潤影や間質性陰影、無気肺も検出の対象としております。

※左から浸潤影+結節影、無気肺、間質性陰影の例を表示しています。

 

胃カメラ(胃内視鏡)検査 内視鏡画像診断支援ソフトウェア『gastroAI model-G』              ―中国四国地域 初の導入―

胃がん診断支援AIを用いることで、ハイ ボリュ-ム センタ-のスーパ-エキスパ-ト検査医並みの精度で、早期胃がんを発見することが可能となり、早期胃がんの早期診断と、内視鏡検査の均てん化が期待できます。

 *高品質なデータを大量に学習したAIが検出サポート

世界トップクラスの医療施設から提供された胃病変画像を学習したAIが早期胃がん検出を支援します。

*内視鏡検査中にAIが解析結果を表示

疑わしい病変を発見しフリーズ操作を行うと、AIが解析を開始して結果をモニターに表示します。

日本における胃がん罹患者数は、毎年13万人以上で大腸がん・肺がんに続いて第三位、死亡者数は毎年4万人以上で肺がん・大腸がんに続いて第三位となっています。胃がんの特徴として、病期が進行すると死亡率が高まりますが、早期に発見すれば十分に治療可能な疾患です。5年相対生存率は、ステージⅢ以降で発見された場合は5割以下ですが、ステージⅠで発見されれば95%以上となります。一方で、早期の胃がんは判別が難しく、4.5-25.8%程度見逃されているとも言われています。

胃がん診断支援AIは、医師と内視鏡診断支援AIが協働して内視鏡診断を行うことにより、内視鏡検査精度の向上が期待されます。

用語解説:きんてん「均霑」平等に利益、恩恵を受けること、また、与えること。医療サービスなどの地域格差などをなくし、全国どこでも等しく高度な医療をうけることができるようにすることを指す語。

その他、自動解析プログラム、アプリを使って診断、治療の支援を行っています。

動脈硬化検査 頸動脈IMT(Intima Media Thickness:内膜中膜複合体厚)計測

最大IMT、平均IMTを自動で計測解析するプログラムです。IMTを定量化することに特化したシステムです。最大IMTは、冠動脈疾患のイベント予測に有用な因子とされ、平均IMTは、全身の動脈硬化の重要な指標とされています。IMT測定は、総頸動脈CCAの分岐部(変曲点)から心臓側に2cmの範囲の動脈壁の画像を用いてコンピューターで解析する事により、他の方法では実現の出来ない0.01mmの精度で解析するものです。 mean IMTのほかmax IMTも測定可能で、動脈硬化の進展状態を診断したり治療による効果を判定でき、また血管年齢もわかる唯一のソフトを運用中です。

高血圧治療アプリ CureApp HT

アプリを活用して生活習慣の改善サポ-トを行うものです。患者さんごとの多様な背景に対応すべく、CureApp HT 高血圧治療補助アプリでは、アプリ内で把握した患者さんの情報に応じて、個々にあわせたガイダンスを提供しています。プログラムは3つのステップで構成されています。 「実践する行動や目標値を患者さん自身が決める」という点が特徴です。アプリ全体を通して、行動変容の理論を用いたり、モチベーションをあげるような働きかけを行い、患者さんが自律的に生活習慣を整えていけるよう設計してあります。 高血圧に対する、3つのプログラムを組み込んだ治療支援アプリを運用中です。

心電図検査

AIを用いたホルタ-(24時間)心電図解析:マイホルタ-II ホルタ-心電図の検査のデ-タを独自のAIを用いた解析アルゴリズムにより、効率的かつ高い精度で自動解析ができるようになっています。心原性脳塞栓症の原因の4分の3とされるのが心房細動で、AIを用いた心電図解析により、早期発見、早期治療への貢献が期待されています。

『用語の解説』
■コンピューター:情報の保存や処理(変更、移動、書き換え)ができる装置
■プログラム:コンピューターが理解できるコマンド(つまりコ-ド)へと変換された一連の命令(またはアルゴリズム)
■アプリケーション(アプリ):人間が作業を実行するために作られたプログラム
■コ-ド:何かを表すのに使われる一連の記号、文字、数値 アルゴリズム:人間に作業の仕方を教える、人間の言葉で書かれた手順や指示のリスト

監修

おきた内科クリニック 
院長 沖田 英明

日本老年医学会 老年病専門医・日本内科学会 認定内科医・日本消化器内視鏡学会専門医・日本リウマチ財団 リウマチ登録医・日本糖尿病協会 療養指導医・認知症サポート医・広島県医師会認定かかりつけ医・日本抗加齢医学会 学会員・日本喘息学会 学会員
clear
初めての胃カメラ検査胃カメラ検査 初めての大腸カメラ検査大腸カメラ検査
keyboard_arrow_up