朝起きたときに「胃がもたれる」—原因と対策を内科医がやさしく解説
目覚めから胃が重い、食欲が湧かない、胸やけが上がってくる——そんな朝の不快感は、前日の食事や疲れだけでは説明できません。ここでは朝に起こりやすい胃もたれの主因と、すぐ試せる対策、受診の目安を要点整理します。
目次
1. 朝に胃もたれが起きやすい理由
睡眠中は消化機能が低下し、夜遅い食事や脂質の多い食事は胃排出遅延を招きます。横になることで胃酸や胆汁が逆流しやすく、逆流性食道炎や胆汁逆流による胸やけ・苦味感が朝に集中して出ます。睡眠不足やストレスは自律神経のバランスを崩し、胃の運動をさらに鈍らせます。
2. 主な原因とチェックポイント
(1)食べ方・飲み方
- 就寝2~3時間以内の食事・夜食:消化が終わらず朝まで滞留。
- 脂っこい料理・揚げ物:胃の出口の動きを鈍らせる。
- 飲酒:胃酸分泌↑+食道括約筋↓で逆流を助長。
- カフェイン・炭酸多飲:刺激・膨満で不快感増大。
(2)機能性ディスペプシア
内視鏡で異常がなくても、知覚過敏や運動低下で少量でもたれます。朝に強いなら、前日のストレスや寝不足が引き金のことも。
(3)逆流性食道炎/NERD
横になると胃酸が食道へ戻りやすく、起床時の胸やけ、酸っぱい逆流、咳・声枯れに。肥満、前屈み姿勢、タイトな衣類、飲酒が悪化因子。
(4)ピロリ菌関連胃炎・慢性胃炎
慢性炎症で粘膜防御が弱まり、空腹時痛や朝の重だるさにつながることがあります。
(5)薬剤・サプリ
- 鎮痛薬(NSAIDs)、一部抗生物質、鉄剤、ビタミンC高用量は胃粘膜を刺激。
- 寝る直前のサプリ一気飲みは逆流・停滞の原因に。
3. 今日からできるセルフケア
食事・生活のコツ
- 就寝3時間前までに食事終了:難しければ量を半分、脂質は控えめに。
- 夕食は「低脂肪+やわらかい」:煮物、湯豆腐、白身魚、温野菜など。
- 飲酒は控える:特に寝酒は避ける。
- 寝具の傾斜:上半身を10~15cm高くする。
- カフェイン・炭酸は午前中心に:夕方以降は温かいノンカフェインへ。
- 朝は水や白湯から:空腹時コーヒーは量を控える。
- 睡眠とストレスケア:就寝前のスマホ短縮、ぬるめ入浴、軽いストレッチ。
市販薬の使い方(一般論)
胸やけには制酸薬、膨満感には消化促進・整腸薬が役立つ場合があります。ただし長引く・繰り返す場合は自己判断を続けず、医療機関で原因を確認しましょう。
4. 受診の目安
- 黒色便、吐血、体重減少、貧血、強い持続痛がある。
- 市販薬で2週間以上改善しない、頻回に再発する。
- 50歳以上の新規症状、ピロリ菌感染歴、胃・食道がん家族歴。
該当すれば内視鏡やピロリ菌検査、腹部エコーなどの精査を検討します。
5. よくある質問
Q1. 朝だけもたれるのは「夏バテ」のせい?
季節要因もありますが、遅い夕食・飲酒・脂質過多・睡眠不足が重なると朝に集中して出やすくなります。反復するなら原因の切り分けを。
Q2. 空腹時のコーヒーはNG?
体質差があります。胃酸分泌を高めて胸やけを誘発する人もいれば問題ない人も。まず量を控え、先に水分や軽食を入れると無難です。
一般的情報の提供です。症状や治療は個別に異なります。気になる症状が続く場合は医療機関へご相談ください。