
この記事はこんな方におすすめです
-
- ✅ 胸焼けや酸っぱい水が上がる症状が何年も続いている
- ✅ 薬を飲めば治るが、やめるとすぐぶり返す
- ✅ 「食道がんになるかもしれない」とネットで見て不安になっている
- ✅ 逆流性食道炎は「完治」するのか、本当のところを知りたい
「胸が焼けるように痛い」「酸っぱい液体がこみ上げてくる」
そんな不快な症状に、長年悩まされていませんか?
逆流性食道炎は、日本人の約10〜20%が抱える国民病とも言われています。
しかし、ありふれた病気だからといって「ただの胸焼け」と軽く見るのは禁物です。
放置して長引かせることで、食道が狭くなったり、最悪の場合は「食道がん」のリスクを高めてしまうことも分かっています。
この記事では、日本消化器内視鏡学会専門医の視点から、逆流性食道炎が長く続くと体に何が起こるのか、そして「完治」は可能なのかについて、最新の知見を交えて徹底解説します。
結論から言えば、正しく管理できれば怖い病気ではありません。
不安を解消し、スッキリとした毎日を取り戻すためのヒントを持ち帰ってください。
【最初に結論】完治は可能?放置するとどうなる?
結論:
逆流性食道炎(GERD)が長く続くと、食道狭窄・バレット食道・食道がんリスクの上昇といった合併症につながる可能性があります。
一方で、適切な薬物治療と生活習慣の見直しを組み合わせれば、粘膜の炎症を鎮め、症状をコントロールしながら再発リスクを低く保つことは十分に可能です。
逆流性食道炎は「一度治して終わり」という病気というより、“完治”よりも“長期的にうまく管理する”ことが現実的で、そしてそれができれば怖い病気ではない、というのが医学的な結論です。
目次
- 逆流性食道炎とは?なぜ長く続きやすいのか
- 放置は危険!長く続くとどうなる?(がん化リスク)
- 「根治」と「コントロール」の違いとは
- 最新の治療法(薬・手術・内視鏡)
- 自分でできる!悪化させない生活習慣・セルフケア
- 医師が教える再発・がん化予防のポイント
- よくある質問Q&A
- まとめ
1. 逆流性食道炎とはどんな病気で、なぜ長く続きやすいのか?
逆流性食道炎(GERD)は、強い酸性の胃液や、胃の中で消化途中の食べ物が食道に逆流し、食道の粘膜を焼いて炎症を起こす病気です。
本来、胃酸は食べ物を溶かすほど強力な酸です。胃の壁は特殊な粘膜で守られていますが、食道の壁は酸に対する防御機能がほとんどありません。
そのため、胃酸が逆流すると食道はやけどのような状態になり、胸焼けや痛みが生じるのです。
なぜ一度治っても、またぶり返すの?
「薬を飲んで良くなったのに、やめたらまた痛くなった」
多くの患者さんがこの悩みを抱えています。理由は、発症の原因が「体の構造」や「生活習慣」に根ざしているからです。
胃と食道のつなぎ目には、「下部食道括約筋(LES)」という筋肉があります。これは普段、胃酸が上がってこないようにギュッと締まっている「逆流防止弁」です。
(※下部食道括約筋が緩むと、胃酸が容易に食道へ逆流してしまいます)
以下のような要因で、この「弁」がバカになってしまったり(機能低下)、無理やり押し広げられたりします。
- 加齢:筋肉の老化により、弁の締まりが悪くなる。
- 肥満(特に内臓脂肪):お腹の脂肪が胃を圧迫し、物理的に中身を押し上げる。
- 食事内容:脂っこい食事やアルコールは、弁を緩めるホルモンを出させる。
- 姿勢・骨格:猫背や、腰の曲がり(円背)による胃の圧迫。
これらは一朝一夕で変えることが難しいため、炎症自体が治っても、「逆流しやすい環境」が残っている限り再発しやすいのです。
2. 逆流性食道炎が長く続くとどうなる?主な合併症とリスク
ここが最も重要なパートです。
「たかが胸焼け」と放置し、食道が酸にさらされ続けると、体はなんとか適応しようとして望ましくない変化(合併症)を起こします。
2-1. 食道狭窄(きょうさく):食道が狭くなる
何度も炎症を繰り返し、治っては傷つき…を繰り返すと、皮膚のやけど跡が引きつるように、食道の壁も硬く厚くなります(瘢痕化)。
その結果、食道の通り道が狭くなり、「食事がつかえる」「飲み込みにくい」という症状が現れます。ここまで進むと、内視鏡による拡張手術が必要になることもあります。
2-2. バレット食道:がんの「前段階」への変化
食道の粘膜は、酸に弱い「扁平上皮(へんぺいじょうひ)」です。
しかし、毎日毎日酸を浴びせられると、「ここは胃の中なのかな? じゃあ酸に強い皮膚に着替えよう」と勘違いを起こし、胃や腸のような粘膜(円柱上皮)に変質してしまうことがあります。
これを「バレット食道」と呼びます。
バレット食道自体に自覚症状はありませんが、これは「前がん病変」とも呼ばれ、非常に注意が必要な状態です。
2-3. 食道腺がんのリスク上昇
欧米では以前から深刻な問題でしたが、近年日本でも増えているのが、バレット食道から発生する「食道腺がん」です。
バレット食道の細胞は分裂が活発で、遺伝子エラーが起きやすい環境にあります。
「バレット食道=必ずがんになる」わけではありませんが、健康な食道の人に比べれば発がんリスクは確実に高いです。
特に、以下の条件に当てはまる方はハイリスクと言われています。
- 肥満(内臓脂肪型)
- 喫煙者
- 高齢の男性
- バレット食道の範囲が広い
2-4. のどや呼吸器への悪影響(非典型症状)
逆流した酸は、食道を通り越して「のど」や「気管」まで到達することがあります。
消化器科ではなく耳鼻科や呼吸器科に通っているけれど治らない、という場合、実は逆流性食道炎が原因であるケースも少なくありません。
- 慢性的な咳・喘息:酸を吸い込んで気管支が刺激される。
- 声枯れ・のどの違和感:声帯や喉の粘膜が炎症を起こす(咽喉頭酸逆流症)。
- 睡眠障害:夜間の逆流で目が覚める。
「飲み込みにくい」「体重が減った」「咳が止まらない」
これらの症状がある場合、すでに合併症が起きている可能性があります。
市販薬で様子を見ず、早急に専門医の診察を受けてください。
3. 逆流性食道炎は完治できる?「根治」と「長期コントロール」の違い
患者さんから最も多い質問の一つが「先生、これは一生薬を飲み続けなきゃいけないんですか?」というものです。
答えは、「人によりますが、コントロール(管理)という考え方が大切」です。
前述の通り、逆流性食道炎は「風邪」のようにウイルスがいなくなれば終わり、という病気ではありません。
「高血圧」や「糖尿病」のように、体質や生活習慣とセットで管理していく病気だとイメージしてください。

- 完治(根治):もう二度と薬もいらないし、何を食べても平気な状態。
- 寛解(コントロール):薬や生活習慣の工夫で症状がなく、炎症もない状態。
目指すべきは後者の「良い状態の維持(寛解)」です。
適切な治療を行えば、多くの人は薬を減らしたり、頓服(症状がある時だけ飲む)に切り替えたりして、病気を意識せずに生活できるようになります。
「完治しない=絶望」ではなく、「うまく付き合えば怖くない」のです。
4. 逆流性食道炎にはどんな治療法がある?
4-1. 薬物療法(PPI・P-CAB)
治療の主役は、胃酸の分泌を抑える薬です。
現在は「プロトンポンプ阻害薬(PPI)」や、さらに強力で即効性のある「カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)」が主流です。
これらを適切に服用すれば、ほとんどの方で症状は劇的に改善し、食道の傷も治ります。
※注意:自己判断で急にやめると、リバウンドで胃酸が増えて悪化することがあります。減薬は医師と相談しながら慎重に行います。
4-2. 手術療法(噴門形成術)
「薬が効かない」「副作用で薬が飲めない」「若いので一生薬を飲むのは嫌だ」という場合、外科手術という選択肢もあります。
緩んだ胃の入り口を締め直す手術(噴門形成術)で、多くは腹腔鏡を使って行われます。
4-3. 新しい内視鏡治療
最近では、お腹を切らずに胃カメラ(内視鏡)だけで行う治療も登場しています。
- Stretta(ストレッタ)法:高周波で括約筋を焼灼し、引き締める。
- EsophyX(エソフィックス)法:胃の内側から粘膜を縫い縮めて弁を作る。
体への負担が少ない最新治療ですが、適応できるかどうかは専門的な判断が必要です。
5. 薬だけに頼らない!生活習慣・セルフケアのポイント
薬で症状を抑えるだけでなく、「逆流しにくい体と生活」を作ることが、再発防止の最強の手段です。
🍽 食事のポイント
- 腹八分目:食べ過ぎは胃の内圧を高めます。
- 脂質・酒・カフェインを控える:これらは逆流防止弁を緩める作用があります。
- 寝る3時間前には食べ終える:胃の中に物が残った状態で横にならないことが鉄則です。
🛌 睡眠・姿勢のポイント
- 上半身を高くする:枕だけでなく、上半身全体が少し高くなるように工夫すると、重力で逆流を防げます。
- 左側を下にして寝る:胃の形上、左を下に向くと逆流しにくくなります(※個人差あり)。
- ベルトをきつく締めない:お腹への圧迫を減らしましょう。
【減量は効果絶大】
肥満がある方は、体重を数キロ落とすだけで腹圧が下がり、劇的に症状が改善することがよくあります。最も副作用のない、根本的な治療法と言えます。
6. 再発やがん化を防ぐために、どんな点を押さえておくべき?
逆流性食道炎と長く付き合っていく上で、守ってほしい3つのルールがあります。
- 自己判断で薬を中断しない
症状が消えても、粘膜の炎症が残っていることがあります。医師の指示通りに飲みきり、減量のペースを守りましょう。 - 「警告サイン」を見逃さない
食べ物がつかえる、黒い便が出る、急に体重が減った。これらは進行がんのサインかもしれません。すぐに受診してください。 - 定期的に「胃カメラ(内視鏡)」を受ける
バレット食道や初期の食道がんは、症状だけではわかりません。定期的な内視鏡検査こそが、がんを防ぐ、あるいは早期発見して完治させるための唯一の手段です。
7. よくある質問Q&A
Q1. 市販の胃薬を飲み続けても大丈夫ですか?
A. 一時的な使用なら問題ありませんが、2週間以上続く場合は受診してください。市販薬で痛みを誤魔化している間に、食道の炎症が進んだり、がんを見逃したりするリスクがあります。
Q2. 炭酸水は逆流性食道炎に悪いですか?
A. 炭酸ガスで胃が膨らむ(ゲップが出る)と、その勢いで胃酸が逆流しやすくなります。症状が強い時期は控えたほうが無難です。
Q3. ストレスだけで逆流性食道炎になりますか?
A. ストレスは自律神経を乱し、胃酸分泌を増やしたり、痛みを感じやすくさせたりします。「ストレスだけ」が原因ではありませんが、悪化させる大きな要因の一つです。
Q4. バレット食道と言われました。もうがんになるのは確定ですか?
A. いいえ、必ずがんになるわけではありません。しかしリスクは高いため、通常よりもこまめな(年に1回など)内視鏡検査による経過観察が不可欠です。適切な管理下にあれば、過度に恐れる必要はありません。
まとめ:逆流性食道炎は「完治より管理」で怖くない
逆流性食道炎は、長く続くと生活の質を下げ、将来的ながんリスクにもつながる病気です。
しかし、恐れる必要はありません。
「正しい薬の服用」と「生活習慣のちょっとした工夫」、そして「定期的な内視鏡チェック」。
この3つが揃えば、症状をほぼゼロにし、健康な人と変わらない生活を送ることができます。
「この胸焼け、いつまで続くんだろう…」
と一人で悩まず、まずは専門医に相談して、あなたの食道の状態を確かめてみませんか?
早期の対処が、将来の安心への一番の近道です。
まずはお気軽にご相談ください
広島市の消化器専門医・おきた内科クリニックでは、
痛みの少ない内視鏡検査と、患者様一人ひとりのライフスタイルに合わせた治療提案を行っています。
※WEB問診を済ませていただくと、当日の診察がスムーズです。
監修:沖田 英明(おきた内科クリニック 院長)
日本消化器内視鏡学会専門医 / 日本老年医学会専門医
広島県広島市にて、地域に根ざした消化器内科診療を行う。早期発見・早期治療をモットーに、苦痛の少ない内視鏡検査に定評がある。




