1 生活習慣改善による肝脂肪減少のメカニズム
- 体重の5~10%減少で肝脂肪が著明に低下する。
- 食事(低脂肪・低GI食)+運動(有酸素運動150分/週程度)が基本。
1.2 臨床試験データ
体重減少率 |
NAFLD改善率 (MRS判定) |
期間 |
5.0–6.9% |
50% |
12か月 |
7.0–9.9% |
60% |
12か月 |
≥10% |
97% |
12か月 |
- しかし、抵抗運動だけでも3か月で超音波上の肝脂肪減少を認めた報告あり(対象82例、抵抗運動群で有意改善)。
- したがって、厳格な食事制限+運動療法を継続すれば、3か月で脂肪肝(NAFL)を改善できる可能性は十分ある。
- 肝硬変へ進行するまでの年数
1 自然経過のばらつき
- 一般に「10~30年」で肝硬変へ進行するとされる。
- 進行速度は以下の因子で大きく異なる:
- NASHの有無(NASHはNAFLより進行が速い)
- 糖尿病・肥満・高血圧・脂質異常症の合併
- 遺伝的素因(PNPLA3遺伝子多型など)
- アルコール摂取量
2 コホート研究データ
- NAFLD患者約62万例を8年間追跡した研究:
- NAFLD→肝硬変への累積リスク39%(8年)
- 代償性肝硬変→非代償性肝硬変へのリスク45%(8年)
- NASHかつ線維化F3の患者の20%が2年で肝硬変または非代償状態へ進行する「20%ルール」
- 改善と進行を左右する主要因
因子 |
脂肪肝改善への寄与 |
肝硬変進行促進 |
体重減少 |
高 |
低 |
運動習慣 |
高 |
低 |
糖尿病管理 |
高 |
低 |
アルコール摂取 |
低 |
高 |
高血圧・脂質異常 |
中 |
高 |
遺伝的素因 |
– |
高 |
- 具体的な3か月プラン例
- 食事療法
- エネルギー摂取を基礎代謝+活動代謝の合計から500kcal/日減
- 低GI食品、飽和脂肪酸制限、たんぱく質増量
- 運動療法
- 有酸素:週150分(ウォーキング、サイクリング等)
- 抵抗運動:週2回(大筋群を中心に)
- 定期モニタリング
- 血液検査(ALT, AST, γ-GTP)1か月ごと、ELFスコア検査
- 画像検査(超音波)開始時・3か月後
- まとめ
- 3か月でのNAFL改善は可能だが、体重5~10%減少・運動継続が必須。
- 肝硬変進行は10~30年の幅があり、NASH・線維化度F3では2年以内に進行する例もある。
- 早期発見・早期介入が最重要。定期的に肝機能・線維化指標をチェックし、生活習慣を徹底的に見直すことで、脂肪肝の改善および肝硬変予防が可能である