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75歳以上の健康診断:なぜ今、後期高齢者健康診査が大切なのか?

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75歳以上の健康診断:なぜ今、後期高齢者健康診査が大切なのか?

「もう歳だし…」「普段元気だから大丈夫」「病院には通っているし、必要ないかな?」──そんなふうに思っていませんか?でも、75歳以上を対象とした『後期高齢者健康診査』は、国が費用を負担してくれる「健康長寿への招待状」です。
年に一度、自分の体と向き合い、未来の元気な毎日をつくるためのヒントを得られる貴重な機会。この記事では、後期高齢者健康診査とは何か、なぜ受けるべきか、当日の流れから結果の活かし方まで、丁寧に解説します。少し長めですが、あなたの“未来への投資”と捉えて、最後までお付き合いください。


なぜ今、後期高齢者健康診査が大切なのか?
体の変化は自覚しにくい――声なき異変をキャッチする

若い頃は多少無理しても回復が早かったかもしれませんが、加齢に伴い体調の変化は徐々に、そして静かに進行します。自覚症状がなくても、血圧や血糖値がじわり上がったり、動脈硬化が少しずつ進んでいたりする場合があります。これらは放置すると、突然の心筋梗塞や脳卒中など命に関わるトラブルにつながる可能性も。
後期高齢者健康診査は、そんな“声なき体の変化”を早めに発見するチャンスです。症状が出る前にリスクを知り、適切な対策を取れば、大きな病気を未然に防ぐことができます。

フレイル(虚弱)の兆候チェックも

近年よく聞く「フレイル」。日本語では「虚弱」と訳され、高齢期に心身の活力が低下し、要介護リスクが高まる状態を指します。具体的には…

* 昔より疲れやすくなった
* 歩く速度が遅くなった
* 筋力低下で開けにくいものが増えた
* 食欲低下・体重減少が見られる
* 外出や活動が減った

こうしたサインは一見軽い変化でも、放置すると転倒・骨折、要介護状態へ進むリスクがあります。しかし、早く気づけば改善策も講じやすく、元気な状態に戻すことが可能です。健診ではフレイルに関する質問も行われるため、定期的に受けることが自立した暮らしを長く続ける上で非常に重要です。

“健康寿命”をできるだけ長く

日本は平均寿命が世界トップクラスですが、介護を要する期間も長くなりがちです。「健康寿命」とは、健康上の制限なく自立して暮らせる期間のこと。後期高齢者健康診査の大きな目的は、この健康寿命を延ばし、最期まで自分らしく生きる力を維持することにあります。健診で現状を把握し、生活習慣を見直すきっかけにすることで、要介護を防ぎ、充実した日々を送るサポートになります。

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後期高齢者健康診査の基本

 対象者・運営・費用

* 原則として後期高齢者医療制度に加入する75歳以上の方
* 65~74歳で一定の障害認定を受け、後期高齢者医療制度に加入している方も対象

* 都道府県の「後期高齢者医療広域連合」が中心となり、市区町村と連携して実施

* 原則無料
* ただし、検査結果で精密検査が必要になった場合や、オプション検査を追加した場合は一部自己負担が生じる場合あり

受けられる時期・場所

* 毎年1回、4月1日~翌年3月31日の間に受診可能
* 各市区町村から送られてくる案内ハガキ(受診券)に受診期間が記載されているので要確認

* かかりつけ医など、案内に載っている指定医療機関
* 市区町村で催される集団健診(公民館など)

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健診で調べること――検査項目をわかりやすく解説

健診内容は大きく分けて「基本項目(全員実施)」と「詳細項目(医師判断で追加)」があります。順に見ていきましょう。

3-1. 基本的な項目(全員共通)

1. 質問票(問診)

* 生活習慣や自覚症状、既往歴・服薬歴を把握する大切な情報源
* 特にフレイル関連の問い:最近疲れやすい?体重減少はある?歩行速度の変化は?外出頻度は?など
* 正直に答えることで、自分の健康状態を正確に評価してもらう第一歩

2. 身体計測

* 身長・体重・BMI:高齢期は過度な肥満だけでなく、低栄養・筋力低下もリスク。適正体重の目安に。
* 腹囲:内臓脂肪の蓄積リスクを評価。生活習慣病予防に役立つ指標。

3. 理学的検査(身体診察)

* 医師が聴診・触診で体の状態を確認。気になる点があれば伝える好機。

4. 血圧測定

* 「サイレントキラー」と呼ばれる高血圧は自覚症状が乏しいまま動脈硬化などを進行させる。定期測定で早期発見を。

5. 血液検査

* 脂質(中性脂肪、HDL/LDLコレステロール):動脈硬化リスクを評価。
* 血糖(空腹時血糖、HbA1c):糖尿病リスクチェック。放置すると合併症が深刻化。
* 肝機能(AST/ALT/γ-GTP):沈黙の臓器・肝臓のダメージを把握。脂肪肝や薬・アルコールの影響もチェック。
* 腎機能(クレアチニン、eGFR):加齢や高血圧・糖尿病で低下しやすい腎機能をモニタリング。
* 貧血(赤血球数、血色素量等):高齢者の貧血は息切れ・倦怠感・転倒リスク増加につながる。

6. 尿検査

* 腎機能や泌尿器系、糖尿病の手がかりを得る。尿糖や尿蛋白などをチェック。

3-2. 詳細な項目(医師判断で追加)

以下は、基本検査や問診結果、過去の健診結果などを踏まえて医師が「さらに詳しく調べる必要あり」と判断した場合に行われます。

* 心電図検査:不整脈や狭心症、心筋梗塞など心疾患の兆候を把握。
* 眼底検査:網膜血管観察で、高血圧や糖尿病性変化を間接的に評価。
* 血清アルブミン検査:栄養状態の指標。低い場合は低栄養リスクが高まり、フレイルや感染症リスクを増大させる。

ほか、自治体や医療機関によってオプションで実施できる検査がある場合もあります。

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 健診を受けるには?――当日の流れとポイント

ステップ1:案内状(受診券)到着

市区町村から案内ハガキや受診券が郵送されます。受診可能期間や対象医療機関リストが記載されているので、大切に保管し、内容をよく確認しましょう。

* 受診券を紛失したら?
市区町村の後期高齢者医療担当窓口(長寿支援課・高齢福祉課等)に連絡すれば再発行可能。

ステップ2:受診先を決め、予約

* 案内に載っている医療機関リストから通いやすい場所を選択。
* かかりつけ医があれば、普段の健康管理との連携が取りやすくおすすめ。
* 電話で「後期高齢者健康診査を受けたい」と伝え予約。
* 集団健診は予約不要の場合や、別途申し込みが必要な場合があるので案内を確認。

ステップ3:当日の準備と注意点

* 持ち物

* 受診券(絶対忘れずに)
* 後期高齢者医療被保険者証(保険証)
* お薬手帳(服薬中の方)
* 質問票(事前に記入できるなら済ませておくとスムーズ)
* 念のため自己負担金(通常は無料だが、念のため少額用意)

* 食事

* 血液検査の精度向上のため、前日夜から絶食(飲水はOK)指示が一般的。機関によって異なるので、予約時に確認を。

* 服装

* 血圧測定や採血、心電図などを想定し、袖まくりしやすい・着脱しやすい服装が便利。

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健診結果の活かし方――未来の健康への第一歩

健診は「受けて終わり」ではありません。結果を受け取り、その後どう行動するかが大切です。

 5-1. 結果の確認ポイント

* 結果の受け取り方法

* 郵送で届く、または医療機関で医師から直接説明を受ける場合も。
* 結果を見る3つのポイント

1. 基準値との比較:基準値外の場合は「要指導」「要医療」などの指示に従う。
2. 前年との比較:たとえ基準内でも、前年と比べて悪化傾向がないか要チェック。わずかな変化が生活習慣見直しのサイン。
3. 背景の考察:体重増加と血圧上昇なら、「塩分摂りすぎか?運動不足か?」と自分の生活と結びつけて考えてみる。

5-2. 「異常なし」でも積極的に

* 「異常なし」は喜ばしい結果ですが、「これで安心、来年まで何もしなくていい」とは考えず、むしろ今の良い状態を維持・向上させるメッセージと捉えましょう。バランスの良い食事や適度な運動、良質な睡眠など、普段の生活習慣を続ける・見直すきっかけに。

5-3. 「要指導」「要医療」の対応

* 要指導(保健指導)

* 保健師・管理栄養士などの専門家から、健診結果や生活習慣に合わせた具体的アドバイスが受けられます。例:「味噌汁の汁を減らし具を増やす」「散歩時間をあと10分増やす」など実践しやすい目標設定。無料なので積極活用を。
* 要医療(要精密検査・要治療)

* 「疑いがあるので専門医で精密検査や治療を早めに受けてください」という重要なサイン。面倒でも放置は危険。早期発見・早期治療で負担軽減・良好な経過が期待できるため、必ず受診を。

5-4. かかりつけ医との連携

* 健診結果はぜひかかりつけ医に提示しましょう。日頃の体調情報と合わせて総合的に判断し、最適な健康管理プランを提案してもらえます。医療機関間の連携で、切れ目のないサポートを受けることが可能です。

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#健診と合わせて考えたいこと

* がん検診

* 胃がん、肺がん、大腸がん、前立腺がん(男性)、乳がん・子宮頸がん(女性)などは後期高齢者健診とは別制度。市区町村で実施、多くは無料または少額負担。健診と同時にスケジュールを組んで定期的に受診を。
* 歯科健診・口腔ケア

* お口の健康は全身と深く関連。歯周病や嚥下機能低下は低栄養・フレイルや誤嚥性肺炎リスクにつながる。定期的な歯科受診でトラブル予防を。

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よくある質問(Q\&A)

Q1. 毎年受ける意味はある?
A1. 大いにあります。体は常に変化しています。昨年問題なかったから今年も安心、とは限りません。毎年の定期点検で小さな変化を拾い、生活習慣の修正タイミングを逃さないことが重要です。車検のように、年に一度のチェックを習慣にしましょう。

Q2. 通院中の病気があるけど、それでも受ける必要は?
A2. はい、お勧めします。通院中の疾患は主治医が管理していますが、健診では全身を広く浅くチェック。通院していない分野で思わぬ異常が見つかることもあります。健診結果を主治医と共有すれば、今後の治療方針検討にも役立ちます。ただし、主治医が同様の検査を定期的に行っている場合は重複不要となる場合もあるため、まずは相談を。

Q3. 面倒で受けたくない…
A3. お気持ちは分かります。しかし、半日ほどの時間で、今後1年、5年、10年の健康を守るヒントが得られるとしたら?もし健診を受けずに大きな病気が後から見つかると、治療の手間・費用・家族の負担は甚大です。未来の自分や大切なご家族のためにも、ぜひ勇気を出して受診を。

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最後に:あなたらしい人生を最期まで

ここまで後期高齢者健康診査の意義から受診方法、結果活用まで解説しました。健診は義務ではありませんが、国や社会からの「いつまでも自分らしく元気でいてほしい」という想いの表れです。
健診を受けることは、自分自身を大切にする行為であり、周囲の安心にもつながります。年に一度、自分の体と向き合う時間をつくり、健診結果という“道しるべ”を携えて、また新たな一年を元気に歩き出しましょう。
まずは手元に届いた案内状をもう一度開き、予約するところからスタート。あなたの健康で輝く日々が、一日でも長く続くことを心から願っています。

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